知床羅臼の春夏秋冬

羅臼の春は命が弾けるとても賑やかな季節。
シャチをはじめ、野生動物との感動的な出会いがあります。
流氷が溶けた4月の海ではたくさんのオキアミや小魚が育ち、それを目当てにハシボソミズナギドリの大群がやってきます。
更にミンククジラなどの大型のヒゲクジラも集まります。
シャチは家族で現れることも多く、春はシャチが最も頻繁に見られるシーズンです。
約2時間半のホエールウォッチングでは知床連山と共にシャチの姿を楽しむことができます。
山では雪解けと同時にたくさんの野生動物の命が生まれています。
冬眠から目をさましたヒグマを小型ボートクルーズで安全に見ることができます。
北海道には140羽しか生息していないシマフクロウ、その半数が知床に生息しています。
その観察施設が羅臼町にあります。
冬期間封鎖されていた知床横断道路はゴールデンウィーク頃に開通し、知床半島最大の湖「羅臼湖」を散策したり知床の雪山を楽しむこともできます。
海では、エゾバフンウニ漁、トキシラズ漁が盛んに行われ、それらを味わうことができる「知床開き」という祭りが開催されます。

夏はマッコウクジラを最も安定的に観察することができる季節。
豪快に潜水する姿や勢いよく吹き出す噴気の音を間近に聞くことができます。
細く深い根室海峡に面する羅臼の町は陸からクジラを目視観測できる世界的にも珍しい地域です。
また、イシイルカに高い確率で遭遇できるのもこの時期です。
羅臼の夏を象徴する昆布漁。
かつて知床岬でも盛んだった昆布漁を見るエコツアーが羅臼で行われています。
昆布漁の歴史から産業と自然の共生について知り、知床最古の番屋を訪れることで、
今と昔の人々の暮らしに触れることができます。
羅臼の海を豊かにしているのは、知床の山々でもあります。
日本百名山「羅臼岳」では上級者向けの登山、知床半島最大の湖「羅臼湖」では、初級者でも楽しめるトレッキングをすることができます。
海では、シーカヤックで知床の夏を楽しむことができ、瀬渡し船での釣りが楽しめます。
夏の終わり頃からカラフトマスやシロザケが戻り、港がさらに賑わいを増していきます。

秋は羅臼の港が最も活気づく季節。
秋サケ漁は夜中に操業し、日の出前に入港して水揚げします。
ガイドツアーでは、水揚げとセリの様子を見ることができます。
羅臼には日本全国からイカ釣り漁船が集まります。多くの漁船が一斉に出港していく姿は圧巻です。
渓流は海と山を繋ぐ場所。
たくさんの鮭が溯上し、ヒグマたちの大切な命の糧となります。
シマフクロウの家族を支える渓流魚オショロコマ、日本では高山地帯でしか見られないこの魚を、知床では海岸近くで見ることができます。
海の恵みが豊富に揃う秋の始まりには「漁火まつり」が開かれます。
いくら丼の無料提供の他、サケのセリ市や、お好みの魚を焼いて食べられる炉端があり、毎年多くの方々が訪れます。
秋は空気が澄んでいて、朝焼けが最も美しく見られる季節。
9月の海ではマッコウクジラが豪快な潜水を見せてくれます。
10月に入ると知床の山々では紅葉が始まります。
知床横断道路が閉鎖される11月までの間、羅臼湖などでトレッキングを楽しむことができます。
トドが回遊してくる晩秋、猟師さんたちの協力のもと、船上での観察ツアーが行われています。

羅臼は流氷がやってくる世界最南端の町。
魚が豊富な羅臼の海に、多くの野生動物が集まり躍動する季節です。
刺網漁をはじめとして、冬も継続される羅臼の漁業。
スケトウダラやエゾバフンウニなど、寒流にもまれて育つ根室海峡の魚介類は、世界で大変高い評価を受けています。
冬の厳しさが増す頃、多くのオオワシ、オジロワシが羅臼に集まってきます。
2月中旬、北西の風に乗って流氷がやって来ると、人とワシの距離が一気に縮まります。
北方領土国後島から昇る朝日、知床連山を背景に青く輝く午後の流氷原。
観光船からは、静と動が一体となった素晴らしい光景が広がります。
運が良ければ、沖合の流氷の上でアザラシの子育てを見ることができます。
流氷の下でも、新たな命が静かに生まれます。
羅臼昆布の森が魚たちのゆりかごになっています。
夏と冬の水温の大きな差が羅臼の豊穣の海をつくりだし、流氷が溶けた海には、たくさんの栄養が残され、命の循環と共に新たな季節が始まります。